そばを食べながら/達富 洋二

夫婦          天野 忠

四十五歳のお前が
空を見ていた
頬杖をついて
ぽかんと
空を見ていた
空には
鳥もなく
虹もなかった
何もなかった
空には
空色だけがあった

ぽかんと
お前は
空を見ていた
頬杖ついて
それを
私が見ていた

こんな詩を六年生に読ませてみた。◆何を見ていますかとたずねると奥さんを見ているとこたえた。頬杖をついている奥さんを見ているとこたえた子どももいた。うまいこと言いますねと褒めると、頬杖をついて何もない空を見ている奥さんを見ているとこたえる子どもが出て来たので、作者はそしてどう思いましたかとたずねた。◆すると、「お前も老けたな」子どもがわざわざ手を挙げて言った。私が「ほう、そうですか」と言ったら別の子どもが「太ったな」と言ったし、また別の子どもは「お前と結婚しておれは幸せやわ」と言った。他にもまだまだ言いたそうにしている子どももいたがいちばん前の子どもと目があったので、どうですかと聞くと「晩ごはん何や」と言った。「味のあること言いますね。」と言って授業を終えた。◆帰り道、僕はにしんそばを注文してから頬杖をついて結びの一番を見ていた。