ステレオタイプ/達富 洋二

阪急のどこの駅だったでしょうか。出発を待っていました。窓の外に見える医院の看板が目にとまりました。「永眠科」と書いてあるからです。近頃の医療はいろいろな科があるもんだと感心しているうちに電車が動き出しました。どんな治療をするのだろう。麻酔が中心かな。蘇生はしないのだろうな。◆と考えていると「増永眼科」という白い建物が見えてきました。昼下がりの電車の中。笑いをかみしめることもできず、吹き出してしまいました。どうやら僕は見たことでしか判断できない性格のようです。情けないことです。◆別府の駅前のお菓子屋さんにも妙なチラシがありました。「知っている人はなつかしい 知らない人はしんせん バーボー」どんなお菓子か知らない僕は砂風呂に埋められている二十分のあいだずっと引っかかっていました。◆帰り道。もう一度そのチラシを見ました。「なつかしい」とか「しんせん」とか、感じ方くらい自由にさせてよ。どうやら僕は気ままに生きていくしかない性格のようです。悲しいことです。