下の森の商店街/達富 洋二

天神さんの南側の商店街を下の森といいます。おふくろがそう呼んでいただけかもしれませんが水菜は今でも下の森で買うことにしています。◆新聞紙で巻いてくれるところがたまりません。言うてもいないのにおまけに人参が一本付いてきます。そうなるとこっちも何かもう一盛り。結局高い買い物をさせられてしまっています。◆この頃はせがれを連れていくことにしています。「おじさん。壬生菜をください。」「ぼんえらいな。水菜と壬生菜の違いが分かるんか。」「先が円いのが壬生菜ってお父さんが言うてたし。」◆これだけの会話で人参が二本になります。ほなかぶらももうとかなあかんな。ついつい目当て以外のものにも手が出てしまいそうになる父親の袖を引くのがせがれ。「そんなん買うても食べられへんやん。お母さんいっつもゆうたはるやんか。」◆せがれがしっかりしてるのかおやじがたよりないのか。ぶらぶら帰る二人の背中に大将のことば。商売あがったりや。