信号待ち/達富 洋二

連休中の授業だということで定刻の五時四十分よりもちょっと早いめに終わった日。早過ぎたかなと弱気。もっと早く終わってあげてもよかったかなとこれまた弱気。◆躑躅の赤が眩しい。残りの花水木がはらりと落ちる。青と桃色の矢車草が並んで揺れる。いつもの帰り道とは違ったにおいがしそう。◆こんなに気分がいいんだからみんなも散歩に行ってるだろうな。賀茂川辺りまで行って飲んで騒いでいるかも。まだまだ教室でおしゃべりに夢中かな。お節介な想像に早めに終わった言い訳しながら角を曲がる。◆ゆっくり帰るにも寄り道する店もない。駆ければ渡れそうな信号をゆっくり待つくらいがせいぜいの時間つぶし。◆と、向こうからにこにこした自転車が一台。ハンドルに提げた白い袋からは九条葱。さっきまで教室に座っていた女の子が買い物を済ませてこちらを見て笑ってる。夕方の安売りに間に合ったみたい。◆暮れかかったようなまだまだ明るいような空を見ながらいいことしたよと僕は信号を渡った。