土曜日のお昼/達富 洋二

小学生の頃。土曜日の学校帰りはもうお腹がすいてたいへんでした。小走りで野球帽を振り回しながら路地に入るといろんなにおいが僕を迎えてくれました。◆僕のうちからはいつも菜っぱとおあげのたいたんのにおいです。裕福でなかったからか僕が好きだったからか分からないけれど土曜日のにおいでした。そしてそれがあたりまえの風景でした。◆菜っぱとおあげのたいたんには冷やごはんが合います。少しかたまったごはんを口に入れておつゆを飲むと口の中でごはんつぶがいい感じになるのです。菜っぱを食べていくうちに下の方からおあげさんを見つけたらそれはもう宝物です。◆昭和六年の「赤い鳥」に京都の小学校の子どもの「煙突」という詩が載っています。学校から帰ってきた。/家からは/昼のうどんをたくにほひが/ぷんぷんしてくる。/雲がしづかに流れてゐる。/煙突がしづかに流れていくやうだ。◆子どもの見るお昼の風景。普通の景色。僕はこの夏休みにこの詩を見つけてどんなにか子どもの頃に戻りたいと思いました。