夕方の鳩/達富 洋二

本願寺のお堂の大きな屋根瓦。見上げているはずなのに吸い込まれていくような気持ちになります。あんな大きなすべり台があればいいなと言って親を困らせたのはいくつの時だったでしょうか。◆ざあっと驟雨のようにやってくる鳩の群れは今でも怖く苦手です。子どもの小さな掌に舞い降りる一羽はかわいいのですが。◆「はと」京都市植柳校二年/ほんがんじの/はとは/からだまげて/はよほしいと/ふくろの中まで/あたまつっこみます。/わたしが/かえろうとすると/四れつにならんで/ついてきます。/おまめはありませんよ。/またきますよ。◆昭和三〇年代の二年生の詩。作者の女の子はどうやら鳩の群れが怖くなかったようです。僕とは正反対のようです。◆ですが、「おまめはありませんよ。」「またきますよ。」僕は市電の停留所の前の信号を待っているときに聞いたような気がするんです。丸物の紙袋を持ったその子のおばあちゃんと僕のおじいちゃんが、「寒おすな」て言ってた横で聞いた気がするんです。