夕飯/達富 洋二

電信柱が田んぼ沿いの道にずらっと並んでいる。電線が波のように同じ形を繰り返しながら続いていく。その下を用水路が流れている。◆「きいろ」とは安全と書いてある電信柱。「みどり」は通学路とかいてある電信柱。その間に何もしるしのない電信柱が五本ある。◆きいろの下には大きなオイカワが群れで泳いでいる。気づかれないように魚とり網で挟みうちにすれば十匹は取れる。そっとそっと近寄って網を水の中に入れたら一気に走り出す。網を底から浮かさへんように。ぐっと。右手をこないするんや。◆みどりの下は土だまり。夕方ここに来れば亀が陸地で休んでいる。いっぱいいる。田んぼ側からそうっと見て一気に陸地に降りて両手で押さえる。小さいのはどんどん逃げるけど大きいのんは動作が遅いんや。水に入るぎりぎりのところで甲羅を手で押さえるんや。ほらこうやって。◆こんなことを話しながら食べているから我が家の夕食は二時間を過ぎてしまう。