雲の切れ間から降りてくる太陽のすじに離陸したばかりの飛行機が重なる。思ったほどに翼は輝かなかったけれど機内のお客は眩しいだろうな。そんなことを心配しながら僕は宮崎行きを待ちながら展望デッキで二杯目の生ビールを飲んでいる。◆隣は老夫婦。爺さんは遠くから降りてくる飛行機の機種を次から次へと説明している。婆さんはそうだとか違うとかうなずいている。B747-400だのDHC-8-400だのと詳しい。見たこともないデザインにも詳しい。飛行機乗りだったのかもしれない。空の上の出会いで結ばれた二人かもしれない。◆僕が三杯目を持って座りかけたときお騒がせしましたと二人が席を立った。そろそろ息子が着きますのでと。◆お父さん。来ましたよ。あの光った雲のところから降りてくる飛行機が東京からの便ですよ。うんうん。◆息子が到着ロビーに来るまでにはまだ時間があるだろうに二人はゆっくり消えていく。宮崎行き搭乗を急かすアナウンスに僕もビールを飲み干した。