帰り道/達富 洋二

駿河湾の夕景。ぽちょんと桜海老がはねたようです。明日は晴れるのかなぁと子ども心。◆歯にはさまっていたのか昼に食べた鰯の醤油干しの胡麻が舌の上に出てきました。口に胡麻味がひろがるのもちょっといや。◆ぷっと飛ばそうと思ったとき、窓越しにホームにいる中学生と目があってしまいました。ぷっともできず、えいっと噛んだ味は秋摘みの川根茶の味。◆胡麻だとばかり思っていたのに茶ばしらだったんだ。そうそうこんな味のぬるめのお茶だったなぁ。昼の店を思いだそうとしても頭に浮かぶのは赤いテレビとその横にはってあったラップにくるまれた関取のサイン。◆誰の名前だったかな。ゆっくり動き出した新幹線。向こうから切符を確かめに来た車掌さんの赤ら顔はどことなく霧島似。そうそう霧島だった。◆通路の向かいの男性が持つスポーツ紙には武蔵丸の写真。夕方の電車の中の風景。窓の向こうはまだまだ青みを残す夕焼けの黄金。三角の光が着いたり消えたりする海。茶ばしらを噛みながら静岡からの帰りです。

2003年11月19日 | カテゴリー :