手拭い/達富 洋二

京都の夏。本当に暑いものです。梅雨時はなおそう感じてしまいます。そこで離せないのが汗を拭く手拭い。実は私はハンカチよりも日本手拭い派です。◆温泉巡りが好きなものですから出張の時にほんの三〇分も時間があればひと風呂浴びて来ます。ご当地の湯の手拭いがいい思い出になります。◆自宅の風呂でも気分は旅。八甲田蔦温泉の手拭い。愛媛松山の道後の温泉。信州塩田平は別所温泉。手拭いを頭にのせて荒城の月を歌いながら楽しんだのは九州岡城の長湯。◆各地の手拭いを上着に入れて夏をしのいでいます。先日は二十歳の頃の大学の学章の入った手拭いを使いました。えび茶色の手拭いは野球の応援の時にははちまきに使ったことを思い出しながら新町通りのグランドの横を歩いていました。その頃の僕はジーンズに開襟の白シャツに下駄。◆今は年のせいかその頃より汗はかかなくなりましたが手拭いでぎゅっと顔を拭いた時の気分は同じです。青い初夏の京都の空を見上げると高いポプラから吹く鴨川からの風がすっと横っ面を通り抜けていきました。

2003年7月2日 | カテゴリー :