木曜日の朝/達富 洋二

小学校の塀越しに体育の歓声。三階にある音楽室からは歌声が聞こえます。何人で歌っているのでしょう。ピアノの音が消えてしまいそうです。◆「だいちゃんも一緒に歌おうか」そばの公園では若いお母さんが歩きはじめたばかりの子どもに話しかけています。おじいさんが銀杏の木陰でじっとしています。鳩は首を前後に揺らして歩いています。僕は手ぬぐいで汗を拭きながらシーソーの支柱に腰掛けました。◆足もとの石を拾ってポンと投げるといつの間にかそこに来ていた鳩が三〇センチほど横にはねました。そこまで続いていた楓の葉のような足跡が途切れ少し離れてまた続きます。◆郵便屋さんのバイク。音楽室からは先生の手拍子とリコーダー。香ばしいにおいのする給食室から水の飛び散る音。◆僕が立ち上がったときおじいさんの前で子どもが転びました。かけ寄る母親の横を鳩が飛びます。逆光の空に舞う影の向こうで授業終わりのチャイムが響いていました。