白い花の前で/達富 洋二

親が逝く。この一週間はうねるような一週間だった。◆その瞬間の数時間前まで話をしていただけに今でも失ったという気がしない。◆京都に生まれ京都に育ち京都を愛したその人。ことばを大切にし元気が好きで静かなあたたかい人だった。◆海のような大きな心をもち海のように大きく生きていきなさいと次男に「洋」という名前を授けた。◆昨日まで教室で過ごしていた教え子が弔問に来る。抱えきれないほどの大きな大きな花はその人が愛した白い花弁。何本もの花が幾重にも重なっている。◆西陣の織物に四十年以上もたずさわりその人が織りなす緞子の白い花の絵柄を思い浮かべ静かに手を合わせた。