花見ず木/達富 洋二

庭の花水木が満開。此処に越してきたときに植えたものだ。割と大振りの薄紅の四枚の花弁は実は苞というらしい。花はその真ん中にある黄緑色のまあるいものでまったく花らしくない。◆四年ほど前は僕の背よりそれほど高くなく台風に根こそぎやられそうになっていた。夏は針のするどい毛虫に囲まれ葉をすっかりなくす。紅く色づくはずの頃には枝だけになっている。◆中途半端な季節に葉を落とすと春に蕾をつけられないようで実は今年がはじめての花である。家人はこれまで「花見ず木」と茶化して笑っていたがこの春は見事な満開にただただ恐縮していた。◆いくつ花をつけているか数えてやろうと見上げるといつの間にか二階に届きそうになっている。葉っぱも花もなかったせいで上へ上へと伸びたようだ。◆ひいふうみいよおいつむうななやあ。百をゆうに超えている。青い空に逆光の四枚の苞。天に向かって咲いている。いよいよ真ん中の花は見えそうにない。