親子風呂/達富 洋二

ちびと風呂に入る。しぼった手ぬぐいを頭の上にのせてやる。赤い顔がますますほてってくる。次は手ぬぐいを冷たい水で浸して頭にのせてやる。◆友だちの名前を教えてくれる。はやりの遊びの説明はなかなかうまい。席替えをしたばかりの教室の座席は風呂のタイルに書いて覚えさせられる。◆「お父さんの子どもの頃はどうやった。」これが口癖だ。「そのころは天神さんにもたくさんカマキリがいてな。かまきりはこうやって後ろから手を回してな。」自分が裸であることも忘れて身振り手振りで話してしまう。ちびの頭からは湯気が出ている。◆バスタオルで拭く前に手ぬぐいを絞ぼってを拭かなければならない。お父さんと入るときの約束だ。ううんと言いながらしぼってもまだまだ水が落ちる。しぼっているうちにまた汗が出る。◆風呂上がり。「お父さん、ビールついだげる。」何よりも美味い一杯だ。「明日の日曜日。カマキリつかまえに行こな。」ちびの頭からはまだ湯気が出ている。