時間があったのでめったに通らない路地を歩いてみました。月曜日の朝のことです。◆お地蔵さんにはまだ湯気が見える熱いお茶とばら寿司が供えてあります。おばさんが玄関先の提灯を外して片付けています。そう言えばきのうはこのあたりのお祭りです。◆赤い髪かざりをつけて鬼になった男たちが町内を踊って歩きます。無病息災。笛と鉦の音と語りのような歌。幼い頃は鬼が怖くてしかたがありませんでした。◆鬼の後ろに大きな傘があります。その傘に入ると御利益があるとのこと。ですがなかなか入れません。鬼がいるからです。右に左に飛び跳ねながら音を鳴らす鬼をすり抜けてそこまで行くのは大変です。◆何歳の時のことだったでしょうか。自分の家の前に傘が止まりました。すっと入ってすっと出てきました。鬼は三件ほど向こうの家の前で跳ねています。◆そんなことを思い出しながらの月曜日の路地裏。地面を見ると「おにさんここでおどっといてください」と白墨で道に書いてありました。