友だち百人できるかな。ぼくはたくさんの友だちをつくりたかった。◆過日、若い友だちの一人がちょっとばかり大きな仕事を終えた。夕方、近くで一杯。慰労という口実のもと、彼をしたたかに酔わせた。強くもないのに杯を重ねる男を見ていると若かった頃の自分を見ているようだ。◆自分の仕事のよしあしは誰よりもおのれが知っている。反省ならなおさらだ。自慢だってしたい。それを口にするかしないかは語れる友をもっているかどうかだ。◆酔って眠ってしまった彼をよそにぼくはもう一人の友と熱の入った話を続けた。◆あるじを失った割り箸が皿の上に無造作に投げ出されている。気の抜けたビールからは泡も出てきやしない。乾きかけたたまりを見ているとそこに彼の笑った顔が映って見えそうだ。我々はさらに四合。◆どうにか一人で歩ける彼の背中を押し、でかい体をタクシーに放りこんだ。間際に交わした握手が何だか熱い。今夜は手袋なしで自転車をこげそうだ。奴の好きな歌を口ずさみながら北大路の坂を一気に上った。