風になる/達富 洋二

緑色の自転車で家庭訪問をさせていただきました。本当に暑い日が続き、シャツの色が何色だったか忘れてしまうくらいの汗でした。◆途中、四条界隈と妙心寺辺りで夕立に遭い、少し遅れることもありましたが、普段の子供の雰囲気を知ることができて、楽しく訪問させていただきました。◆さて、帰り道、私にはチョット楽しいことができました。帰ってからの酒の肴を買って帰ることが日課になったのです。普段は通り過ぎるだけの商店街やお店を自転車でのぞきながら帰っていくうちに思いついた悪戯気分の買い物です。◆歳をとった学生と間違えて蛸の子を少しまけてくれた魚屋もありました。男一人の夕食の買い物を気の毒に思ってくれたのか、レジで仕分けをして袋にまで入れてくれたスーパーもありました。◆薄緑色の紙に包んでもらった鱧の入った白い袋をかしゃかしゃいわせながら熱い町を走っていくときの風は幼い頃のままでした。