「はんなり」ということば/達富 洋二

京都には「はんなり」ということばがあります。「あのお方はほんまにはんなりしたはるなぁ」「ここはんなりしててええわぁ」というようにつかいます。「はんなり」とはどんなことばなのでしょうか。◆まず「ん」について考えてみましょう。日本語には音便化というものがあります。その中の撥音便はある音を「ん」と発声させる働きがあります。この「はんなり」もそうです。もともとは「はななり」だと思われます。◆次に漢字で表すことを考えてみましょう。「はななり」は「花なり」となるわけです。花と言えば世阿弥の風姿花伝が有名です。「秘すれば花」「時分の花」ということばがあります。「花」には陽気で上品で栄えているという意味があるのです。ですから「はんなり」とは上品ではなやかという意味です。それ以外にも「花」に状態を表す接尾語「り」をつけて撥音便化したという考えもあります。◆芭蕉も「はんなりと/細工に染まる/花うこん」という句を残しています。