暮らしのことば/達富 洋二

伯父の法事で伊勢に行ってきました。母の里です。小学生の夏休みはひと月そこで暮らしていました。◆ですからわたしの話しことばには伊勢のことばが混じっています。「ナニヤットンノ」「ゴウワクノォ」「オオキンナ」今でも口から出ることがあります。◆そんな生活のことばの中でつかってみたくてもなかなか使えないことばがあります。伊勢では京都で「~シハル」と言うのを「~シテミエル」と言うことがあります。◆隣の奥さんが六地蔵さんのお世話をしたはることを「世話してみえる」というのです。何でもないことばだからこそそこに暮らさないものには言いにくいのでしょう。◆伯父の孫が縁側から大きな声で言います。「お寺さんが来て見えた。きょうも足の先がおぼえなしになるんか。」さらりとつかっています。みんなが座布団の上でお念仏をとなえます。◆昭和十年赤い鳥に「手の先が冷えておぼえなしになったよ」という三重の小学生の詩が載っています。