火に問う/達富 洋二

焚き火に惹かれる。はぜる音ときらめく色は飽きることがない。赤い星が散る。◆川遊びで冷えた躰を暖める。籠づくりのための竹をあぶる。風呂を沸かす。そして酒の肴をつくる。◆子どもの頃、買い物について行き、母が市場で買い物をする間、魚屋の前で待っていた。わたのそうじをすることも三枚におろすことも此処で覚えた。塩のふり加減は自分で試さないと分かりそうになかった。◆皮から焼くか身から焼くか、予想はいつも外れた。もう裏返してもいいだろうと思っても店の人は見向きもしない。「こげるで。」こちらのどきどきをよそに、火箸で炭を組み直すだけである。◆黄白い脂がじゅっと炭に落ちる。においがお腹にしみる。ひょいっと串を持ち上げ、へぎにのせ、串を抜いてお客に渡す。「かっこいい。」◆外では自分の肴は自分で焼く。炭の組み方は自分で覚えた。焼き具合は喰い気が強く早すぎることが多い。火に問う。「もういいか。」火が言う。「そんなに急ぐな慌てるな。」やがて消えゆく火との勝負はいつも黒星だ。