杉の木が五本並んでいる。間隔はそろっていない。いちばん左側と隣とは割と離れていて二本めと次とは近い。◆三本めは少し太い幹だが奥にあるせいか黒く細く見える。右側にぽつんとあるのは表面が白くおまけに空の色が映って飛び出しているようだ。◆五本の木を縫うように楓の枝が伸びている。秋の日射しにそれが光っている。木立の奥のお堂の朱はその色を深く落とし緑にとけている。◆月のいとはなやかにさしいでたるに今宵は十五夜なりけりと思い出でて殿上のお遊び恋しく…◆光の対立語はかならずしも「かげ」ではない。主人公源氏は、光をも、その陰影をも宰領することによって、物語の統率者たりうるかのようだ。これは源氏物語研究の藤井貞和の説。◆今ぼくの足もとの木漏れ日が動いた。瀬田川の十月の波はそんなことにはおかまいなしに上に下にいそがしく動いている。