ブルペン

はじめて聞く高校名。そのアルプスの手前のブルペンが見える最前列に座った。二桁の背番号のバッテリーの声が聞こえる。汚れることがないかもしれないユニホームが春の日差しに光る。仲間が走るダイヤモンドをどんな想いで見ているんだろう。守りも攻撃もないここにキャッチボールの音が響く。

右に左に首を動かしながら僕はその白球を眺めている。故郷から持ってきた練習球が甲子園の土で汚れる。それだけが思い出になるかもしれない。それでもブルペンの音はやまない。

帰り道。きれいに爪を切った15番の右手の指が頭からはなれない。