研究会中に何度も空が光った。部屋の屋根をたたく雨の音で自分の授業を語る彼の声も聞き取りにくい。春の嵐。
三寒四温という悠長なものではなく、この雨で寒さとはお別れだと言わんばかりだ。そう、この雨で冬は終わり、今夜で時が変わる、明日からは新しい季節なんだ。
本物を見すえて取り組んだ彼の授業はまさに春の嵐だったんだ。話題性もあった。関心も高かった。評価も分かれた。だからこそ、この男の歩いたところには色とりどりの花が咲く。大地に根を張り、幹を太らせる。やってみたい、ついていきたいと願う若い者が集う。
3時間後、僕たちは互いの声も届かないほどの雨の中を肩も袖も裾もびしょびしょに濡らしながらビール屋に向かった。
10年若返ってこいつと一緒の学校で働きたい。冬を声高らかに笑い飛ばすこいつは僕にはまぶしすぎる。
二軒目に向かう頃には雨も上がり、街に人の声が戻ってきた。スキップでもしたいなあと振り返ると、水色の傘をくるくる振り回しながら、春はこっちですよと奴が笑ってた。