全部とまる列車はかっこいい。ひとっ飛びって、急ぐ特急よりずっといい。その線を支えているものがどんなものか、どんなことが起こっているからこの線がここに在るのか。どんな人がこの線に暮らしているのか。
支えているものを知らないかぎり、その未来は見えてくるはずはない。だから僕はひとつの居眠りもせず、ずっときょろきょろしてた。すてきな名前の駅も、いつもはひとっ飛びで降りる駅も、さっきとよく似た駅も、誰もいない駅も、全部、覚えてる。
この次、特急の窓から見えるこの駅は、今までよりずっと身近で、きょうよりずっとあたたかいはず。
だって、僕はここの駅前の栗弁当がとっても美味しいことを知っているんだから。ここから足をのばせばあつあつのちくわ屋さんが昼からお店を開くことを知ってるんだから。
青春18切符は、いくつになっても青春時代の好奇心にあふれた僕に引き戻してくれる切符なんだ。