バイバイの切なさ

まあ,とにかくよくしゃべったものだ。4時間,ずっと。お酒の杯は数えていないけど,心地よい時間。お月さんの図案のようなのれんのこのお店はそれだけで僕を饒舌にしたけど,心地のよさは聞き手のまなざしのせい。聞いてくれるっていうのはなによりもの贅沢。そして,こんな僕に語りかけてくれるっていうのも申し分のない贅沢。贅沢ばかりの時間があっという間に過ぎるのはあたりまえ。

予定より一本送らせたJRは終電。その終電さえも逃してしまいそうな冷酒。タクシーの席に身をくっつけて,降りたらホームまでかけっこ。先頭の車輌にたどり着くまで、見えなくなるまでのバイバイはほんとうに切ない。

あの頃の泣きべそはどこにもいやしない。次こそは麻婆豆腐。また思案橋から駅のホームまでかけっこの続きをしよう。