通町筋の居酒屋に江口くんを見た。凛々しい顔立ちにうっとり、、 、するはずはない。江口洋介似の彼は、実は僕たちの仲間。昼間の勉強会のある瞬間、彼の仕草が江口洋介の何かと重なったらしい。かつてのゼミの先生からそう言われた彼は終始「よう言われるんです」を繰り返したが、誰もそれを信じない。しかし、確かにどことなく似ていなくもない。眉毛の上から額までの間なのか、ジョッキを飲んでいる口もとなのか、お手拭きで顔をぬぐっている時の目もとなのか。
一晩中、江口になりきっていた彼だったが、タクシーを見送ってくれるときにはいつもの「奴」に戻っていた。