ひとり芝居/達富 洋二

もっといい奴なはずなんだけど上手く自分を出せない。不機嫌な顔なんてしたくない。とげのある言い方だって本心じゃない。◆そんな言い方しなくてもいいのにって思われていることを知っている。「何か怒っているの」って気をつかわせていることも分かっている。「そんなことないよ」って僕のことばは宙に浮いている。ただ自分の中の何かに引っかかっているだけなんだ。◆いい香りのハーブティーだって、日曜日に買った新しいTシャツだって。もっとはしゃいで楽しみたいのに「別に」って素っ気なくしているのはこのゆがんだ心のせい。君が髪型を変えたことももっとステキな話題にできたのに。むずかしい顔をして割り箸の袋を何度も折ったり結んだりしている。◆明日になれば素直になれるはずって思いながらもう四日。「遅くなるよ」以外の電話もしたいのにそんなときは電源ひとつだし。◆ねえ僕たちもうどのくらいかなあ。ねえ日曜日に一緒につかうシャンプーを買いに行こうよ。僕が自転車こぐから。