海と空の境が肌色に光る。海の端は紫色。空の端は蜜柑色。二つの色が合わさって肌色に光る。◆新潟発の北越号は少し右に傾きながら日本海をただ走る。紫陽花の乱れる斜面。雀が舞う集落。立ち枯れた松の道。蓮の浮かぶ沼を縫うように走る。◆仕事先に向かう前に早めの昼食をとホームでそばを食べた。雪中庵という名前のその店の女性は透き通るような白い腕でそばを湯がいてくれた。◆仕事を済ませた帰り道。あれもこれもと買った土産の袋を抱えて階段を下りると「お帰りですか。」と声を掛けられた。帰りは電車の中で駅弁にビールでもと思っていたけれどそばに変更だ。◆できたそばに山菜をのせる腕が湯気と重なって朝よりも白く見える。「そばがお好きなんですね。」確かに僕はそばが好きだ。でもそれよりもこういう会話をさがしているのかもしれない。葱とだしの味がまだ口の中に残っている。◆草野球をする少年が車窓に見える。暮れなずむ北越路。海と空の肌色はいつのまにかすっかり小さくなっている。金沢十九時十五分。