夕日が背中をおしてくる/達富 洋二

大学を卒業し志願して離島の教師になりました。島ですから求めなければ情報はやっては来ません。◆出かけた先は国語教育研究全国大会。詩人であり教師である戸田和樹の「夕日が背中をおしてくる」の授業を見ました。以来十余年。この詩は子ども賛歌であるとともに私の背中をおしてくれるものとなりました。◆昨春。本校教官室で戸田和樹と出会ったのは運命です。戸田の「夕日」を担任している子どもたちに受けさせたいと強く思うようになりました。◆十一月十一日。戸田が教室に入ってきました。「みなさんと詩を読みたいと思います。」十年ほど前と同じです。強い授業です。やさしさの中に厳しさがあります。◆さよならさよならさよならきみたち/ばんごはんがまってるぞ/あしたのあさねすごすな◆私の三十七人が戸田と勝負をしています。引きません。戸田はさらに攻めてきます。発言した子どもは再び切り返される戸田の問いかけに顔を紅潮させます。頷きます。◆そんなにいそぐなあわてるな。優しくなった戸田の目は子どもと言葉のあいだにありました。