長崎佐世保の四ケ町商店街。アーケードから少し折れたところに小さなラーメン屋がある。屋号は大阪屋。西海だの九十九島だのと地元の名勝地をあげれば観光客も入るだろうに。◆主人は大阪から出て来たのか。大阪で修行してきたのか。無責任な想像をしながら入った店には地元のことばが溢れている。◆とりあえずビールと餃子を注文する僕も無粋。観光客らしく皿うどんかちゃんぽんを注文するべきだったと思いながら二本目を注文。それにしても皿うどんを食べてる人がいない。品書きにはちゃんぽんがあるのにそのにおいさえしない。さては長崎人は食い飽きたか。◆店の外から子どもの佐世保弁が聞こえる。[やかさおお]の暖簾ごしに日本の西の端に沈む夕日が見える。「ちゃんぽんはありますか。」「おいよ。」という大将のあたりまえの声に少し安心しながらコップを空けた。「うまかよ。」と運ばれたちゃんぽんはガツンとした本場の味。間違いなく大阪屋のちゃんぽんだ。