一〇時一二分京都発五〇〇型のぞみ。大分への旅だ。みどりの窓口で切符を買う。大分までの往復と禁煙席の指定。僕がリクエストすると同時にコンピュータの画面をタッチする女性の指は疑うほどに速い。◆「こんなに速くて正確に処理する方ははじめてです。」カードにサインをしながら僕は思ったままをことばにした。「ありがとうございます。一日中しておりますから。好きな仕事です。」微笑みながら彼女は言う。◆「こちらが乗車券と新幹線、そしてソニックで大分まで。こちらがお帰りの分です。京都着が少々遅くなりますが、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」先ほどのコンピュータのときとは全く違った表情だ。一枚一枚の切符をゆっくりと差し出して数字を指さしながら説明してくれる。◆「旅を楽しませるような説明ですね。」というような無粋なことは言わない。「 一日中しておりますから。好きな仕事です。」と返されるに違いない。◆彼女が仕立ててくれた旅がはじまる。博多行きのホーム。握りしめた切符が妙に愛おしい。