空梅雨/達富 洋二

近くのお宮まで散歩に行く。下の息子は僕の前を歩いたり手にぶら下がったり忙しい。上はしきりに学校での話を続ける。聞き入ってしまうと下の子の足を踏みそうになる。いつもの犬が舌を出しながらやってくる。◆この頃はグローブを持って出掛ける。下の息子は青いボールを蹴りながら前を行く。上は軟球をポンポンと鳴らしながら友達の話を続ける。相変わらず犬はハアハアとやっている。◆夕涼みの犬にいいところを見せようと二人は大きな音をさせてボールと戯れる。◆神使の牛の角に帽子を引っかけて休んでいると社のかげからお宮の人が出てきた。大きな手箕に梅がどっさり入っている。今年は大きくて数も多いらしい。◆帰り道。グローブも半ズボンの四つのポケットもふくらんでいる。ボールを投げても蹴っても実が落ちる。笑っても実が跳ねる。◆郵便ポストの横を黄色い実が転がった。舌を出した犬の前に転がった。奴は鼻で転がした。それでも雨はまだ降らない。