苫小牧発、仙台行きフェリー

苫小牧発、仙台行きフェリー

あの爺さん見つけた。

わざわざ港まで見送ってくれた男、土産にさいころ二つ握らせてくれた奴。

テープを拾わせることは次の次に取っておいたけど、こいつがここに棲みついていることをうらやましく感じたり、一緒に連れて帰りたい衝動に駆られたり。

「賭けるものなんて何にもなかばってん、せめてあと二年、あと四年、育てることに賭けてみるか。」

フーテン暮らしは僕のほうだけど、なあ同い年の爺さん、元気に生きていてくれ。

この旅、しっかり胸に残しておく。

土産にもらったさいころ二つを手の中で振りながらの僕の旅。

またふりだし。それが心地いい。

いつもふりだし。ふりだしを楽しんでる。

戻る旅に陽が沈む。

戻る旅はいつもふりだし。僕はもしかしたらふりだしを待ってるのかもしれない。

またな、同い年の爺さん。