クリスマスの夜,声の共有

クリスマスイブの夜。暗くなってから研究室を出た。最後まで大切なことばのやりとりをして今年の仕事を終えた。僕の仕事は「声」をあずかって,「声」を届けること。「声」を共有すること。

神は僕の声を聞いてくださっているのだろうか。神は僕にどんな声を届けてくださっているだろうか。不届きな僕は声を共有できないでいる。

僕は誰の声を聞くことができているのだろう。僕の声は誰に届いているのだろう。僕が共有できているのはどんな声なんだろう。

クリスマスイブの夜は少ししんみりする。少しわくわくする。そして少し静かになって,そして。

何年くらい前だったろう。その頃は,新幹線がクリスマスを届けてくれていた。日本中にクリスマスを運ぶのはトナカイじゃなくて新幹線だった。すてきな音楽と一緒に。僕の車はJR東海の新幹線みたいに速く走れないけれど,この車にたくさんの声を詰め込んで,九州中を走りたいなあ。サンタさんのプレゼントみたいにステキじゃないけれど,誰かに声を届けたいなあ。声があたたかければもっといいなあ。そんなこと思いながらきらら坂を走ってる。

来年のクリスマスイブまで,共有できる声が僕のからだに生まれるといいなあ。そんなこと願いながらひとりぼっちの国道を走っている。