いつくしみの朝

暑いかなあ、と家を出る。暑いねえ、とすれ違う。暑かったなあと靴を脱ぐ。とにかく梅雨明けからは「暑さ」が主人公。僕たちが脇役にならないように暑さしのぎをどうするかが知恵の見せどころ。

中ジョッキを飲めば暑さを忘れて楽しめますよ、久しぶりの涼しい居酒屋。確かに、蝉やカブトムシにビールを飲む知恵はないだろう。にぎやかな涼の夜。

見るものすべてが陽炎に揺れている。これこそ夏の昼、と言いたいところだが「陽炎」は春の季語。この暑さはのどかどころじゃない。うららかな気持ちにもなれない。

舞い上がれ、という朝ドラの舞台は五島列島。此処は僕の第二の故郷。夏がよく似合う。先週末、三十八年前に家庭訪問をした家で四十代後半の教え子と飲んだ。この連中に「とりあえずビール」はない。焼酎で乾杯、焼酎だけで終わる。酒の肴は、教え子が釣った魚と当時二年生の担当だった先生の手作りの佃煮。絶品。酔い浸る夜。

いつくしみに抱かれた一晩のやさしい宴。島を包む「いつくしみ」に負の感情はない。熱帯夜さえ受け入れられる。僕たちは「いつくしみ」の脇役でいいのかもしれないと気づいた夏の青い朝。