十六夜

ゆうべ,大きなお月さんを見逃したから今夜の月見酒を楽しみにしていた。

僕は太陽よりも月。子どもの頃からずっとそうだった。大きくなってからもそうだし,今でもそう思っている。誰かを照らすことなどできない。照らしてもらうだけ。照らしてもらっても上手くいかないことも少なくない。だけど,月が好きだ。

満月はむしろまぶしいくらいより隠れているほうがいい。薄雲の向こうのお月さんは奥ゆかしい。小さくなっていくお月さんは心細くなるけど,自分を見ているよう。暗闇の月は安心できる。数日すれば細い眉のような月に出会える。上弦の月はもちろん俳句でもひねりつつ熱燗。

月のようになりたい。あこがれている人は風になりたいって言ってたけど,僕はやっぱり月になりたい。