何かの折には湯につかる 今年最後の講演が終わった帰り,ぼくは温泉に寄った。 何も考えず,ただ何も考えず湯につかる。この贅沢な気持ちは何かの仕事を終えたときならなお格別だ。いくつ講演しただろう。何人の先生と話したろう。教室の事実に心ふるわせたことは数えられない。そんな風景が湯に浮かぶ。浮かんだ風景を両手ですくい上げる。もっともっと丁寧に生きたい。 見上げた楼門の上にはお月さん。 くぐった暖簾の向こうに人の声。 もっともっとゆっくり生きたい。