春が来る

庭の木瓜の花が咲いた。

ついこの前,小さなつぼみを見つけて喜んでいたのに,もう満開。ここしばらくの暖かい日差しにほどかれたように花弁が開いた。

我が家は毎年,この赤い花をはじめとして一気に色が流れる。それぞれが咲き誇り,それぞれに違った色に身を包む。どれもがかけがえのない色と形だ。人はどんなにがんばってみてもこの花弁ひとつ創れやしない。

それなのに,これらの木々や草花は毎年おなじように花弁を開く。ほどかれたように。

それぞれが自分を楽しみ,それぞれに違った空を見上げるように咲き始めている。

百花繚乱前夜。僕の仲間もそれぞれの処でそれぞれに咲き誇るときを待っている。