こんなはずじゃなかったのに

僕はいま鹿児島での研究会を終え、長崎行きの新幹線の中。トンネルを走る窓に映るマスクの顔を見てる。

役立つ仕事ができなかった力不足ともっと成長しなきゃいけないのにという戒めと少なからず芽生えているおごりが情けない。

大事なものを見ていなかった気がする。それは分かっている。会場近くの球場からの歓声に心奪われたわけではない。

ふとよぎった最近聞こえて来る評価に心乱しているわけでもない。心の中心に置かなければならないものに目をつむっている自分が原因であることはわかってる。

だから。心をまっすぐにしようと朝からザビエル大聖堂に行ってきた。心の中心を確かめるため。

ホテルの豪華な朝食には見向きもせず、新幹線ホーム下でうどんを食べることにした。この店のお母さんはいつも「気をつけて行ってらっしゃい」と言ってくれるから。

トンネルを抜けた。不確かな僕の顔が消え、見えるのは7月の日差しに光る里山の緑。

ああ風を感じたい。開かない窓はつまらない。新鳥栖からは鈍行で帰ることにしよう。自然の思ったら声を聞くだけで、きっと、それだけで心満たされる気がする。