9月10日。熊本の高等学校で現代文法の授業をした。24人の高校生との「はじめまして」はとてもさわやかだった。真っ黒に日焼けした野球部の坊主頭の「よろしくお願いします」に胸が高鳴った。
大の高校野球ファンとしては,高校生というだけでたまらない。風を打ち,大地を蹴る姿に惹かれ甲子園に通い続けてる。マウンドから全力でベンチに戻る菊池投手は,グランドで走れる喜びさえ感じられない仲間がスタンドにいる限り,全力疾走に徹した。一人一人が白球にかける思いはぼくには到底分からないけど,分かった気になっている。そんな坊主頭がぼくの文法の授業をにこにこ聞いている。たまらない。全力疾走で文法を聞いてくれることはないにしても,ぼくは全力疾走で語ろうとしていた。
60分なんてあっというまだった。途中,グループワークを取り入れたこともあり,教室はひとつにまとまっている。すっかり学級担任になった気持ちになっている自分が恥ずかしい。最後にイントネーションの話をコラム的に紹介して教室をあとにした。廊下から教室をふり返ったとき,真っ黒の坊主頭と目が合った。もしかしたら彼の頭も文法に全力疾走だったかもしれない。
翌日届いた高校の先生からのメールに「また来てください」とあった。もちろん「はい」に決まってる。大学でぼくの授業の続きを受けたいと言っている生徒がいるとかどうとか。いっときの盛り上がりだとは分かっていてもぼくの心は躍ってしまう。