京都、北野の天神さん

京都には白梅町とか紅梅町という粋な町名がある。

北野の天神さんは、そんな界隈に凜と建っている。今頃は梅の香りがやさしく風にただよっているに違いない。

父は桜の人だった。酒飲みだったからか、ワンカップを片手に平野神社の桜の下がよく似合っていた。母は梅の人。紅梅には薄墨の小紋を、白梅には萌黄の紬を。「こうでないとあかんのんえ」と言いながら、本当にその通りに生きてきた。

僕はおかんが着物を着るのを手伝うのが好きだった。おまくを持っていったり、帯揚げを選んだり、帯締めに指を添えたり。

だから、紅梅の香りは母の着物の匂いと重なる。

神さま、きょうもいつくしみをありがとうございます。