薪をつくる仕事

薪ストーブの暖かさは人をやさしくする。一人で炎を見つめる時間だって,家族で語り合うときだって,薪ストーブがことばを包み込んでくれている気がする。11月の紅葉が落ちる頃から,山桜のつぼみをほどく風が吹くまで,我が家は薪ストーブと一緒に時を送る。

だからこそ,年中,薪の仕事が絶えない。木のある暮らしそのものだ。チェンソーの音がすれば手伝いに行く。遠くに昨日まで見えなかった山肌が見えたら倒した木を分けてもらいに行く。床屋でもさりげなく話題に出して情報を集める。お気に入りのチェンソーで45センチに切る。油圧の薪割り機も持ってる。二つに割るか,四本に割るか。風を通す積み方だって覚えた。とかげのマンションのように我が家の薪小屋には樫の木が美しく積み上げられている。そして,1年半から2年。薪ができあがる。

きょうは焚きつけ用に木っ端を割った。これは力仕事ではなく,名人芸。自在に太さを加減して木っ端を裁く。暖かい冬の日にもってこいの仕事だ。

手間と暇。そんな僕にこたえてくれるように,薪ストーブはいつまでも語りかけてくる。そんな時間,暖の前のウイスキーはたまらない。