人里はなれた美山に「風姿庵」という小さな美術館がある。そこに集められた世界中の「人の暮らし」は豊かな財だけで集められるものではない。風姿庵という小宇宙は,道を歩き,人と交わり,日常を見つめ,暮らしを語り合える人間としての魅力と熱いまなざしによって集められ,大きな時間という風呂敷によって包まれた端整でありいびつな空間だ。
風姿庵の時間と空間に身を置いていた数時間,地球はまんまるだと確信した。まちがいなく地球はまあるい。まあるい表面に無数の道がひび割れ模様のように刻まれている。その道とそこからはじまる暮らしが互いに織り合い重なり合う見事な調和が心地いい。