雉がトラックで飛んできた

丹後の鉄砲打ちから雉が宅急便で届いた。

重たい紅色の身と柔らかい琵琶色の身だ。雉の味噌鍋にして喰うことにした。地元の根菜と京都の豆腐を入れて自家製の味噌を信楽の土鍋で煮る。

美味いとかどうとかじゃない。絶品だ。僕は股の骨のまわりについている堅い肉をちぎりながら喰うことに専念する。ひと噛みに焼酎ひと口。汁のからんだ豆腐ひと切れに焼酎ひと口。目の前に積み上がった雉の細くて堅い骨の山を片付けることにはしたたかに酔ってしまった。

ああ風流,ひとつ俳句でもと,思ってもことばが出てこない。それなら誰かの雉の俳句をと思っても思い出せない。酔いのせいだと,酔い覚ましにとご飯にかけた鍋の汁に紛れた豆腐を揺れる箸で追いかけているうちにどうにかこうにか子規の俳句をひとつ思い出した。

豆腐屋の豆腐を崩す雉の声

ゆうべ,雉が京都の豆腐やの屋根にとまっている夢を見て目が覚めた。奴は長屋の豆腐屋に向かって「ケーンケーン」とやっている。翻訳するなら「味噌鍋にするなよ!」だろうか「飲み過ぎるなよ!」だろうか。朝は残り汁に白菜を入れて味噌汁代わり。雉まるごとたいらげた。ここまで喰ったら雉も満足だろう。朝から身体が火照る。

週末に鉄砲打ちに礼状を書こう。どんな品を添えて送り返そうか思案中。