何度目だろう、福岡県京築地区。
ここには仲間がいる。仲間たちをぎゅっとくっつけてくれるN先生がいる。いつもいつも心地いい研修の場になるのは仲間とN先生のおかげ。そしてきょうも。いや、今までにない充実があった。仲間たちは「時間がたりませんよ」「あっという間に研修が終わってしまって、」と帰り際にうれしい声を届けてくださった。
今夕は、このまま福岡空港まで出て、天草に飛ぶ。飛行機に接続するJRの時間を調べ、駅まで送ってくださる車内でも研修の話に花が咲いた。そしてこのご縁を感謝し合った。
念には念を入れて確認したはずなのに、苅田駅には20分ほどはやく着いてしまった。改札口まで見送ってくださろうとするN先生にそのお気持ちだけでありがたいことだとお礼を告げ、ホームに降りた。夕焼けが照らす田舎町のホームはそれだけで絵になるのに、何とも言えない充実感に包まれた僕は、山田洋次監督の映画の主人公にでもなった気分でホームをゆっくりと歩いたり、しゃがんだり、腰かけたり。誰も来ないホームは時間を止めたよう。10分も待つ頃には列車が来ないんじゃないかと心配になるほど静かだ。ようやく小倉行きが見えてきたとき、「達富先生、きょうは本当にありがとうございました!」の声。あわててふりかえるとN先生。もうたまらない。もっと気の利いたことを言えたはずなのに、僕の口から出たことばは「また来ます!」
電車には思いのほか多くの高校生が乗っていて、向こう側の窓がさえぎられている。せめて手だけでも振りたいと、高校生の隙間から見えた線路の向こうには、きっと僕の姿など見えているはずがないのに深々と頭を下げてくださっているN先生。
「こんなこと、あたりまえのことじゃないんだぞ」、と自分に言い聞かせつつ、熱くなる目がしらに豊後水道に沈む夕陽がまぶしい。