この道を通って7年目。佐賀大学でのはじめての年の春。登校中の小さな1年生を見た。そう、車の中から見た。勝手に「わかばちゃん」と名付けた。
大きいランドセルと大きな帽子。わかばちゃんが見えない。荷物と洋服が歩いているようだった。
7時18分。決まったように道を渡る。横断歩道のない農道は誰かが停まってくれないと渡ることができない。僕はわかばちゃんを渡らせるために、7時18分にそこを通過できるように運転を調整した。
僕だけじゃない。誰もがわかばちゃんを渡らせるために一旦停止をしたかったに違いない。僕たちはおじさんドライバーは競って停まった。
雨の日は傘が歩く。写生会のときは絵の具かばんが歩く。水着やリコーダー、図画工作で使うんだろうか空き箱やペットボトルも歩く。学期末は、それら全部が歩いて帰ってくる。
あれから6年。
卒業式の日。大きくなったわかばちゃんは新しい服に身を包み、自分の目で確かめてお辞儀をして道を渡った。競って停まろうとするおじさんを先に通らせ、小走りに渡るわかばちゃん。
卒業おめでとう。