思い出すたび,思い出す旅

日本一の鶏飯。

これ以上,裂けないというほどの仕事。鶏肉を糸にする。手間の掛かる仕事の指先のあたたかみが残っている。丁寧な仕事はそれだけで美しい。

錦糸卵。鶏肉の白い糸と卵の黄色い糸。

椎茸の香りがたまらない。だんだん太くなる糸,だんだん色を濃くしていく糸。

鮮やかな緑。包丁で鋭角に切られた葱はこれまでの暖かな食材とは打って変わって緊張感さえかもしだす。

そして,湯気を立てる鶏スープをなみなみと。

パパイヤの漬物をちらして完成。

ざざざっと流し込みたいような,幾種類もの糸をしみじみ味わいたいような。茶碗を持つ手が思案しているところに,二膳めしあがりませんか,との声。

では,初めはしみじみ,おかわりはざざざっと。

美しい食事はいつまでもいつまでも心満たしてくれる。一週間前が昨晩のようだ。

ありがとう,るみさん,壮。

神様,僕に仲間をありがとうございます。