「家族の方ですか。親族の方ですか。」スタッフステーションでそう問われた。「いえ友人です。」とこたえた。「お友だちですね。案内します。」僕はもうそれだけで満足だった。この病院がとてもやさしいものに感じた。友を独りぼっちでさせていることのやりきれなさが少し薄らいだ。
薄いピンクのカーペットまでもがあたたかな空気を作っている。この上を行ったり来たりしているドクターも知った人のような気がする。ふるさとの駅に立ったときの感じに似ていると思った時に423号室にたどり着いた。
帰り道。タクシーの運転手が聞いた。「お見舞いですか。」「ええ。」友のやせた顔が頭から離れず簡単にやりすごした。「お帰りのお客様はふつうは岸和田駅へお供するのですが府中ですか。どちらまでですか。」「ええ京都までなんです。」「いいお友だちなんですね。」そうだ。そうなんだ。僕がいい友だちではなく友がぼくのいい友だちなんだ。
西村隆司。ぼくは西村さんの永遠の愚弟でいたい。二人分,生きるから。